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Sunday, January 22, 2006

OP/小さなオフィスの中では。

 小さなオフィスの中ではいつでも誰かが何かを話している。
「昔、ジュリア・ロバーツが出ていた映画ってなんだったっけ?」
とマイカが言う。小さなオフィスの中では誰かがポンと投げかけた言葉は、特定の誰かに投げかけられた言葉ではなく、その場所にいるすべての仲間たちに投げかけられた言葉となる。
「誰だよ。そのジャリンコ・ロボットってのは?」
サイゾウが聞く。
「そういえば『ロボッツ』もDVDになったんじゃなかったっけ?誰か持ってない?海賊版でもいいからさ」
ケイジが言う。
「ジュリア・ロバーツよ。それから海賊盤は駄目!まったく映画くらいちゃんと観てないと、教養を疑われるわよ」
「誰に?」とサイゾウ。
「どうして?」とケイジ。
「例えば私に。それはイホウだからよ」
「じゃあ別にいい。疑われてもいい」とサイゾウ。
「ばれなきゃいいじゃんイホウでも」とケイジ。
「もう、勝手にしなさい!」
マイカは両方の頬を蛙のようにプクリと膨らませる。そんな会話をしながらも手はしっかりとキーボードの上を動き回り、目はディスプレイ上に展開している個々のオブジェクトに注がれている。
「プリティ・ウーマンだよ」
とボスがボソっという。
「ジャリンコ・チエの方が好きかな」と僕。
「ジャリンコとかロボットとかいう単語は今後一切禁止します。そうよ、それよ。プリティ・ウーマン!あの映画好きだったなあ。どこかにいないのかしらねえ。リチャード・ギアのようなダンディーで素敵なお金持ちのオジサマが」
「オジサマが好きなの?」
「若いだけじゃねえ」
とマイカがため息をつきながら言う。
「でも昨日も合コンだっていって早く帰ったじゃんか」
「合コンというは誰も好き好んで行っているわけじゃなくて、気が乗らなくても行かなければならない時があるのよ」
「昨日の合コンは気が乗らなかったというわけだ」
「だってさ。相手はみんな学校を卒業して会社に入ったばっかりのアオクサイのばっかりなのよ」
「オヤジクサイよりはいいじゃん」
「オヤジクサイ方がまだましよ」
「アオでもオヤジでもクサイのは嫌だなあ」
と僕はあくびをしながらいう。
「そろそろ昼だけど今日はどこに食べに行く?」
「日本食堂」
「またあそこ?たまにはちょっとセンスのいいレストランに行きたいなあ」
「安くて、美味くて、沢山食べれる日本食堂のどこが悪いんだ?」
「私も日本食堂は好きよ。おばちゃんもいい人だしね。でも毎日、日本食堂に行かなくてもいいじゃないの?このマンションの周りには他にもたくさんのレストランがあるんだからさ」
「レストランはたくさんあるが、安くて、美味くて、沢山食べれるのは日本食堂だけだ。わかった。マイカを今日の留守番当番に任命する。オレたちが日本食堂で食べてる間、マイカはここで仕事を続けること。オレたちが帰って来たら、イタリア食堂でもフランス食堂でもどこでも行けばいい」
とボスは言うと、先に立って部屋を出て行った。
「よろしくね」
といって僕たちも部屋を出た。
パタンと閉まったドアの向こうから、マイカの悔しそうな声が微かに聞こえた。

 小さなオフィスの中ではいつでも誰かが何かを話している。
黙々と仕事をしていることもあるけれど、そんなことは本当に珍しいことで、前日に皆で朝まで飲んでいて、口を開くこともできないほど二日酔いの苦しみに痛めつけられているときくらいのものだ。

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