« 「ラオスにいったい何があるというんですか?」:村上春樹 | トップページ | 「タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった」:宮沢賢治 »

2018/06/14

「うつヌケ」:田中圭一


「うつヌケ」という本を読む。
「うつ」というやっかいな病気にかかった人々の
声を聴くことができるコミックだ。
ぼくの友人や知り合いの中にも同じ病にかかり、
悩んでいる人がいる。
彼らがこの本を読んだら、
未来に対して少しは希望を持つことが
できるかもしれないと思う。
もうとっくの昔に読んでいるかもしれないけれど。


ポチッとよろしく!

■「うつヌケ」:田中圭一

サブタイトルは、
「うつのトンネルを抜けた人たち」。
作者の田中さん自身も同じ病気にかかり10年くらい暗闇の中で生きていたという。「うつヌケ」とは「うつ」という病のトンネルを「抜けた」人のことをいう。

田中さんの場合は、「うつ」になった原因を、
「自分を嫌いになったこと」
とキッパリと語る。それまでは仕事でも何でも「できる」と思っていた自分がいたのだけど、転職を機に自分にあまり向いていない仕事をしているうちに、自分が思っているほど、自分が仕事ができないのだということに気が付き、自分のことを嫌いになってしまう。
自己嫌悪。
誰もが一度くらいは、自己嫌悪してしまうことがあるだろう。田中さんの場合は、自己嫌悪が「うつ」になるきっかけだったという。

「うつ」の状態がどんなものかは、「うつ」になった人にしかわからない。田中さんはそのときの感覚を、次のように表現している。

★毎日毎日続く原因不明のつらさ
絶え間なくつきまとう原因不明の「恐怖と不安」
どんな曲を聴いても
どんな映画を観ても
どんな風景を見ても
なんの感動もわかない・・・

色彩のない世界。
それは、とても辛い世界だと思う。田中さんの場合は「自己嫌悪」が引き金となって、「うつ」を発症し、「自分を好きになること」によって、だんだん「うつ」のトンネルから抜け出すことができたという。その道のりが、漫画という解りやすい方法で描かれている。

「うつ」という病気は自分では「治った!」と思っていても、何かの拍子に再来するものらしい。昨日までは色彩のある世界だったのに、ちょっとしたきっかけで再び灰色の世界に入り込んでしまうという。田中さんはそんな病の再来のことを「突然リターン」と名付けて、その原因について自身が考え気が付いたことを書く。その「答え」は田中さんの場合に有効な「答え」だったのだけど、SNS等で他の人にも紹介したところ、多くの同じ病に悩んでいる人々から、共感の声が届いたという。

この本は、第1話から第20話までで構成されている。
第1話から第3話までは「田中圭一の場合」というタイトルで、田中さんの「うつ」との闘いについて語られる。
第4話から第19話までは、同じ病に悩み克服してきた人々への取材を行い、その一人一人の「うつ」との闘いについて描かれている。「うつ」という病との闘い方が人それぞれに多種多様であることがわかる。

「うつ」という病に悩んでいる人の中には、闘うのに疲れて灰色の世界に閉じ込められたままの人もいるかもしれない。そんな人々がこの本と出合うことによって、少しでも長くて暗いトンネルの出口の光が見えるようになればいいなと思う。

この本を読んでいて、ぼく自身「うつ」的な状態だったことが、過去にあったことに気が付く。あの色彩感のない日々が、たぶんトンネルの中にいた時期なのだろう。そして人は誰でも「うつ」のトンネルに迷い込んでしまうことがあるのだと思う。ぼくにも「突然リターン」がやってくるかもしれない。色彩感のない朝が来たことに気が付いたら、この本に書かれていたことを思い出し、自分に合った「うつヌケ」の方法を模索したいと思う。

(TOYOKUMA)

|

« 「ラオスにいったい何があるというんですか?」:村上春樹 | トップページ | 「タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった」:宮沢賢治 »

コミック」カテゴリの記事